大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)1736号 判決

被告人 渡辺吉太郎

〔抄 録〕

原判決挙示の証拠を総合すれば被告人が昭和二十五年六月二十四日判示村役場において判示小池村農地委員会に提出行使した通称奥四郎こと渡辺与作名義の小作料六百六十九円十五銭の受取書中受取年月日として「昭和二三年一二月二〇日」とあるのは、もと「昭和二一年一二月二〇日」と記載されていたのを故意に変造されたものであつて、被告人は右受取書の日附が変造であることの情を知りながら、これを昭和二十三年度小作料を納めた証拠として前示委員会に提出した事実を肯認するに十分である。本件記録を調査し、当審における事実の取調の結果に徴するも、原審の右認定は事実を誤認した違法があるとは認められない。本件起訴にかかる公訴事実は被告人が変造された私文書を行使したと云う事実であるから右事実を認定するには、その私文書が変造されたものであること、被告人が、その変造文書であると云う情を知りながら真正なものとしてこれを行使したことを認定判示すれば足り、それが何時何人によつて変造されたものであるか、また被告人以外の者が変造したとすれば、被告人が右変造者変造の日時その他の具体的事実を知つていたかどうかと云うようなことまでも、必ずしも、これを証拠により認定判示する必要はないのである。故に原判決の認定判示は所論のように理由不備の違法があるとはいえない。

註 原判決の認定した罪となるべき事実は、

被告人は、渡辺与作(家号奥四郎)より西蒲原郡小池村大字道金字沢田二ノ切一、三七一番地田六畝四歩外十九筆田四反四畝六歩畑五畝二十四歩、合計五反十歩を小作し昭和二十一年度小作料米八石九斗二升二合金納換算六百六十九円十五銭を同年十二月三十日納入し渡辺与作より被告人宛「本米合計八石九斗二升二合此代金六百六十九円十五銭右之通受取候也昭和二一年一二月三〇日奥四郎」なる受領証の交付を受け、これを保管して居たものであるが、昭和二十三年度、同二十四年度の小作料を納入しなかつた等の事由により昭和二十五年四月二十五日渡辺与作より新潟地方裁判所三条支部に小作地返還並小作料請求の調停申立を受け、同裁判所はこれを小池村農地委員会に現地勧解の依嘱を為したところ同農地委員会は同年六月二十四日同村役場に於て右勧解の為め農地委員会を開催し新潟県農地部小作主事佐野吉造と共に勧解を為した際、被告人は前記昭和二十一年度小作料の受領証記載事項中「昭和二一年」とあるを擅に「昭和二三年」と変造したものであることの情を知りながら右同所で坂井正三等の組織する前記農地委員会及び小作主事佐野吉造等に提示し、昭和二十三年度小作料は既に完納し居る旨主張し以て変造私文書を行使したものである。

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